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No.6 鹿島の匠 ”杉彫 小森惠雲さん”

佐賀県鹿島市の「面浮立」(めんぶりゅう)
鬼の面を被り、勇ましい踊り手が、鉦(かね)や太鼓、笛などの伝統的な音楽に合わせて踊る民俗芸能です。

面浮立の起源は諸説ありますが、約400年もの間、地域ごとに人から人へと伝わり守られてきた佐賀県を代表する文化です。

お祭りや神社の奉納で、鹿島市の至る所で舞が披露されています。
また、鹿島市の小学校では、中学年の運動会の恒例種目として長い間、踊り続けられています。

そんな鹿島市民にとって馴染み深い「面浮立」
しかし今、この”面”を作る事が出来る職人さんは鹿島市には2工房で3人のみ。内2人は70歳を超えられています。

今回は、「面浮立」に無くてはならない「面」を彫る、佐賀県を代表する、鹿島市在住の木彫刻師「木彫工房 杉彫五代目 小森惠雲さん」につて皆さまへご紹介させて頂きたいと思います。ぜひ最後までお付き合い頂ければ嬉しいです。

面浮立奉納 鹿島市行成地区の面浮立 琴路神社にて
面浮立奉納 七浦大宮道地区


地区の練り歩きが行われる

・ 五代目 小森惠雲さん プロフィール

製作した作品を持つ小森惠雲さん

1981年佐賀県鹿島市に生まれる。
1996年佐賀県立佐賀北高等学校。
芸術コース 美術専攻 入学。
1999年愛知教育大学 総合造形コース 入学。
2003年~2007年公立中学校にて美術講師。
2007年四代目 惠雲(父)に師事。
2010年佐賀玉屋にて初個展。
2012年佐賀玉屋にて第2回個展。
2017年杉彫の代表に就任。  

【受賞歴】
1991年第12回佐賀県児童・生徒木工工作コンクール 知事賞。
1992年第13回佐賀県児童・生徒木工工作コンクール 知事賞。
1993年第17回全国児童・生徒木工工作コンクール 農林水産大臣賞。
1993年第14回佐賀県児童・生徒木工工作コンクール 知事賞。
1997年第80回佐賀美術協会展 洋画部門 入選。
1997年第47回佐賀県美術展覧会 彫刻部門 入選。
1998年第81回佐賀美術協会展 洋画部門 入選。
1998年第81回佐賀美術協会展 彫刻部門 入選。
1998年第48回佐賀県美術展覧会 彫刻部門 入選。
2000年第50回佐賀県美術展覧会 彫刻部門 入選。
2000年第6回K展 洋画部門 入選。
2002年第85回佐賀美術協会展 彫刻部門 入選。
2003年第53回佐賀県美術展覧会 彫刻部門 入選。
2004年第54回佐賀県美術展覧会 彫刻部門 入選。
※ホームページより引用

四代目小森惠雲さんの元に誕生され、芸術について深く学ぶと同時に数々のコンクール、美術展覧会で受賞をされています。彫刻に限らず洋画も描かれており、多才な小森さん。
また、佐賀県登録文化財に認定されており、その才能は芸術界において一目置かれる存在です。
各メディアの取材も多数受けられており、昨年はドキュメンタリーの番組取材を受けられ、「面浮立」の木彫刻師として奮闘される姿を映像という形を通して多くの方々に届けられました。


・ 面浮立

お面といえば、皆さまはどのようなイメージがありますか?

お祭りの時に売られているキャラクターのお面、能楽で使われるお面、ひょっとこや、節分の時に使われるお面、思い浮かべれば色々出てきますよね。
鹿島市ではお面と言えば誰もが「面浮立」と答えるのではないでしょうか?それくらいに地元では親しまれているお面です。

鋭く勇ましい「面浮立」

「面浮立」とは”鬼の面”を示す言葉だそうです。
一見、小さな子供達が怖がって泣いてしまいそうな鋭い表情をした鬼。
実は農業と深く関わっています。

耕作を害する悪霊を封じ込め豊作を願う為の奉納として神事で大切な役割を果たしています。勇ましい鬼の面には五穀豊穣や自然への感謝への想いが込められているのです。顔は怖くても芯はとても温かい「面浮立」です。

鹿島市では夏になると秋の神事に向けて子供から大人まで地区ごとに練習が行われます。鹿島市の夏の風物詩として受け継がれています。

面浮立の練習をする様子

魔除けとして玄関に飾る習わしもあり、人々の暮らしを災いから守ってくれています。

この「面浮立」は佐賀県の重要無形民俗文化財に指定されており、鹿島市は元より、佐賀県内でも大切にされています。

「面浮立」には雌と雄があります。阿・吽(あ・うん)とも言われます。
雌面は口を大きく開け舌を伸ばし、目は吊り上がり、額にはいっぱいに皺(しわ)の線が流れ上がっています。
雄面は目の玉が大きく口を結び、額に皺の線が寄り角が長いのが特徴です。

雌面と雄面

・ 工房取材

ここまでご紹介した小森惠雲さまの木彫工房へ実際に足を運び、作品を拝見させて頂きました。

祐徳稲荷神社へ向かう途中に工房を構えられ、工房の中へ入ると、木の香りが充満していてとても癒されます。

工房の外観
工房内には沢山の作品がある

先程ご紹介した「面浮立」も壁面にずらっと並んでいて、その一つ一つが勇ましく、何とも言えない存在感があり、佐賀県を代表する文化財の趣きを感じます。

様々な面浮立の展示

工房内には沢山の作品がありました。取材したのは5月上旬、手掘りの兜が並んでいました。木で彫られた兜は、独特の存在感と風合いがあり、人の手で作り上げられたこだわりや迫力、温かみ、豊かさを感じました。

兜飾り

現代ならではの作品も多く作成されてあり、ランプシェード、干支の置物、スマホケース、表札看板、モニュメント、家紋彫刻などあり、工房内は見どころ満載でした。

伝統工芸の枠を超えて沢山の作品を生み出されています。

工房に展示してある作品

一つの木から、様々な形の作品を生み出す小森さんの彫刻。
多分野において機械化が進んだ現代に、人の手により生み出される作品はまさに唯一無二の物であり、それぞれの風合いや注ぎ込まれた想いは何物にも代えがたいキラリと輝く魅力があります。

小森さんの鍛錬された技術とセンス、伝統を受け継ぐ数少ない彫刻師としての熱い想いを感じます。

皆さんも一度「木彫工房 杉彫」へ足を運んでみて下さいね。


・ 小森さんの活動

元々、美術教師として働かれていた小森さん。
冒頭でご紹介した、小学校の「面浮立」では、毎年鹿島市内の全ての小学校へ出向き、子供達が披露する時に使用する「面浮立」の作成を指導する講師としてもご活躍されています。
運動会本番では、勇ましい立体の面で踊る「面浮立」はとても勇敢で素敵です。
子供達にとっても、面を作成するところから、踊りを覚え、運動会で披露するまで沢山の時間を費やし、素晴らしい経験になっていることと思います。

面浮立製作の一コマ
運動会での面浮立の一コマ

他にも、絵画・木彫教室・工芸体験も行われています。
子供から大人まで芸術に触れあう事で、豊かな想像力や発想力を伸ばしたり、物を作り出す素朴な喜びを感じる事が出来ます。

工芸体験は事前予約を行えばどなたでも申込が出来るので、祐徳稲荷神社の参拝をした後に体験するのも素敵ですね。

素晴らしい技術や経歴をお持ちの小森さんに芸術を学べる事は大変貴重な体験だと思います。

工芸体験の様子

・ ふるさと納税 × 木彫工房 杉彫

ここまでご紹介してきた小森さんの作品の数々。
一部を鹿島市ふるさと納税の返礼品としてご準備しております。ぜひ下記リンクをご覧下さいませ。
一つとして同じものが無い特別な作品に寄付者さまより喜びの声が沢山届いています。
小森さんの手で作られた自分だけの特別な作品に必ずご満足頂けるはずです。

・ 小森さんへのインタビューを通して

小森さんとお話をしていると、穏やかな方という第一印象から、冷静で情熱的な職人魂を感じました。
「自分の名前が入る”面”妥協はしたくない。」そうお話をされた小森さん。

五代受け継がれている「惠雲」の名が刻まれた面浮立

代々受け継ぐ名前を真っ直ぐな想いで継承されているのが伝わります。

また、現代の生活や嗜好を考えた作品創りを意識しているという事もお話して頂きました。伝統を受け継ぎつつ、進化を遂げられているのだと感銘を受けました。

一番制作していて楽しいと思うのはどのような作品ですか?と質問すると、
立体の作品を制作するのが好きだと教えて頂きました。工房内にも立体の作品が沢山展示してあり技術の素晴らしさに息を飲みました。

また、これから運動会シーズンに入り、小学校への「面浮立」制作の講師の仕事で多忙な日々を送られている小森さん。

鹿島市の伝統を至る所で継承されて多方面でご活躍をされています。
これからも、ご活躍をお祈り致します。


ーあとがきー

私は鹿島市で育ったので、小学校3年・4年の時に「面浮立」を運動会で踊った記憶があります。しかし、今の子供たちが身に付ける立派な面ではなく、厚紙で作った面でした。

私の子供も小森さんからご指導を頂き立派な面を付けて踊ったのですが、率直に「今の子供たちは恵まれているな~」と思いました。

一保護者として、小森さんの活動に心から感謝しております。

また、昨年放送されたドキュメンタリー番組の取材を受けた地区に住んでおり、練習風景の取材の様子を近くで見守っていました。
まさか、このnoteで繋がるとはその時は思っていませんでしたが、放送を見て小森さんがどんな思いで「面浮立」を彫られているのかが伝わり胸が熱くなりました。

また、記事でもご紹介しておりましたが、「面浮立」の見分け方について、私はこう教わっていました。「女はおしゃべりだから、口が開いている面が雌だよ!」と。笑
その時は、地元の笑い話かな?と思っていたのですが、小森さんにその事を話すと、否定はされなかったので、やはりその説もあるのかもしれません(^^)

これからも子、孫、その先の後世へと「面浮立」が受け継がれていく事を心から祈っています。

最後に鹿島市の有明海の恵をお届けします。当社スタッフのお父さんが有明海での漁の名人なのです。

”さざれ”(小さなエビ)漁の様子
お醤油で甘辛く煮た”さざれ”

なかなか国産のエビって手に入らないのですが、有明海にはエビが沢山いますよ。甘くて本当に美味しいのです!!
素揚げも美味しいですよ!

最後までお付き合い頂きありがとうございました。
次の投稿も楽しみにしていて下さいね。そいぎね~(またね~)

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